今年始めにOTC薬(一般用医薬品)のネット販売を再開し、株価もめざましく上昇したケンコーコム。
6月には安倍晋三首相の声明により、OTC薬のネット販売が全面解禁となり、医薬品の通販もだいぶ一般的になってきました。
さてここにきて物議をかもしている医薬品ネット販売問題。
事の起こりは今月12日、「薬事法および薬剤師法の一部を改正する法律案」が閣議決定されて国会に提出されました。
主だった内容として、OTC薬に変更されて間もない28の薬品に関しては「要指導医薬品」とし、薬局での対面販売を義務付けるとともに、劇薬指定となる5つの薬品に関してはネット販売を禁止する、というものでした。
しかし大々的に発表されたのは上記の内容のみであり、その陰に隠れるように極めて重要な事項が記されておりました。
それが今回の問題となった「処方せん医薬品のネット販売」を禁止するという内容。
明らかにこちらの方が重要度が高いはずなのに、なぜ隠匿されるのか。
有識者の弁によれば、裏では日本医師会や日本薬剤師会からの癒着があり、政治献金も動いているという話。
すなわち、処方せん医薬品のネット販売が実現することによって大打撃を受けるであろう病院・薬局が、既得権益を守るため
に安倍内閣への政治工作を行ったのではという話です。
処方せん医薬品の市場規模は一般医薬品の10倍にものぼり、実に6兆円以上と言われています。
この薬事法改正案が決定されたのを受け、ケンコーコムは「処方せん医薬品」のネット販売ができる権利を求めて行政訴訟を起こしました。
処方せん医薬という巨大なマーケットをめぐる利権争いは、厚労省とケンコーコムの闘争から、安倍晋三首相と楽天の三木谷浩史社長をめぐる一連の騒動(三木谷社長が産業競争力会議の民間議員を辞任すると表明したが、後に撤回)に発展したのです。
安部首相としては、アベノミクス戦略として立ち上げた産業競争力会議の中心人物である三木谷氏が辞任すれば非常に不利な状況となったでしょう。
果たして安部首相は三木谷氏に対してどのように慰留したのかは分かりませんが、今回の騒動はアベノミクス経済の雲行きに関わることであり、薬事法改正案の決議次第ではケンコーコムにとどまらず楽天等の株価にも何らかの影響が出ると思われます。
今回、薬事法改正案の内容に激怒して産業競争力会議の辞任を表明した三木谷氏に対し、甘利経財相からは『値段偽装工作をするような会社であり、明らかに商売の利益目的』と、楽天ゴールデンイーグルス優勝記念セールを槍玉にあげて痛烈な批判も。
しかしながら、結局のところ民間人から見れば、そのような利権争いはどうでもよく、医療費と病院通いの手間が抑えられれば良いのではという意見が多く見受けられます。
株価としては、
PBR(一株あたりの純資産)が約5.56、と割高感はありますが、26日に「楽天24」のサービスを吸収すると発表した事が買い材料となり、27日には年初来高値を更新しました。
今回の処方せん医薬品ネット販売が実現すれば、再び株価が高騰するものと思われます。
26日には、「薬事法改正に関する緊急提言」として、医薬品のインターネット販売についての民間人有志からの提言が発表されました。
処方せん医薬品のネット販売については「アメリカ、イギリス、ドイツなどでは処方せん医薬品に関しても、一定ルールのもとでインターネット販売が認められている。我が国に限って『処方せん医薬品のインターネット通販は危険』とされる根拠はない」
と述べており、処方せん医薬品のネット通販を推進する動きもみられます。
こういった世論の流れに安倍政権が医療業界の構造改革に動き出すか、三木谷社長との亀裂が深まるか…。
非常に身近な話であり、アベノミクスの今後を左右する規模に発展しつつある「医薬品ネット販売」は今後も目が離せません。