独メルケル首相退任後のドイツはどうなるのか?為替への影響は?
最終更新日: 2018-10-30
メルケル首相が2021年の任期満了で退任すると表明
10月29日にドイツのメルケル首相が、2021年の任期満了をもって首相を退任すると発表しました。
また今年の12月に行われる「党首選にも出馬しない」とも表明しています。
記者会見で寂しそうな顔をした独メルケル首相
記者会見では「任期を終えた後は、いかなる政治ポストも求めない」と言っていましたね。事実上の引退宣言をした形となりました。
メルケル首相の退任のきっかけ
退任の意向を示すきっかけとなったのは、ドイツ西部であるヘッセン州での州議会選挙です。
メルケル首相が率いるCDU(キリスト教民主同盟)は、第一党を維持しましたが前回のポイントよりも10ポイント落としました。
また連立政権を構成するSPD(社会民主党)も大きく得票を落としました。
メルケル連立政権が支持を失った理由
この背景には、連立政権内も移民対策などを原因に不安定な状態が続いていること。簡単に言えば「内輪もめ」が原因で信頼を失った形になっています。
SPDは戦後最低の得票率となりました。有権者からかなり厳しい目を向けられているのがわかりますね。
メルケル首相は、こういった一連の流れの責任を負う形となり今回辞任を表明しました。
ドイツの移民政策からメルケル首相の退任を考えてみた
ニュースを見るといきなりの退任宣言のようにとれますが、メルケル首相にとって不具合が生じ始めたのは今に始まったことではありません。
2005年に首相についてから13年ですからね。メルケル首相が退任すると、G7の中で日本の安倍首相が一番の長期メンバーとなります。
それほど長くメルケル首相は第一線で活躍されていた訳ですから、ずっと順風満帆だった訳ではないんです。
難民政策がメルケル首相を失敗へ導いた?
ドイツと言えば「世界随一の経済黒字国」のイメージがあると思います。EUの中でも他を引っ張る形になっています。
そしてもう1つ「移民を受け入れた国」というのが頭に浮かびます。
ドイツは2015年に約110万にも移民・難民を受け入れました。しかしそれほど多くの入国を連邦政府は制御しきれず、国内に混乱を招き入れてしまいました。
この移民問題をきっかけに2016年の地方選挙でもCDUは、大敗・連敗を記録しています。
2016年あたりから退任の考えはあったのかもしれない
メルケル首相は、ドイツ国民からも「お母さん」という愛称で親しまれていました。それほど倹約家で人気があり、信頼を集めていましたからね。
他国から見れば少し高圧的で傲慢ともとれる態度も、自国の首相だったら頼もしい限りです。
そんなメルケル首相が2016年の大敗時に「自分の移民政策は失敗だった」と認めています。
さらに「できることならば時間を何年も前に戻して、(移民政策の)準備を整えたかった」とも発言をしています。
決して移民政策自体は間違いではなかったとしても、混乱は国内・政権内に広まり今回の退任に繋がったと考えられます。
メルケル首相が辞めたらドイツはどうなるの?
首相の任期は2021年までありますが党首選にも出馬しないので次期党首、そして次期ドイツ首相の座は誰になるかで今後のドイツが変わってきます。
CDU党首=ドイツ首相ではありませんが、現状第一党なのでメルケル首相退任後の首相に一番近い存在となります。
そして党首を決めるCDU党大会は、今年の12月なのであと2ヶ月を切っています。
次期ドイツ首相になりうるCDU党大会の立候補者
すでに5名が次期党首に名乗りを上げています。(写真左から)
- アンネグレート・クランプカレンバウアーCDU幹事長
- イェンス・シュパーン保健相
- フリードリヒ・メルツ元CDU・CSU院内総務
- アーミン・ラシェット(ノルトライン=ウェストファーレン州首相)
- ダニエル・ギュンター(シュレスウィヒ=ホルシュタイン州首相)
すでに党首選はスタートしていますね。
SPDの指示が落ちてきたといっても長年の間、メルケル首相だったからまだ政権をとれていたとも言えます。
事実上の「指導者不在の状態」が長引くのは好ましくありません。またメルケル首相は、党首と首相は同一人物が勤めるべきと考えを示しています。
メルケル首相は、CDU内でリベラル派とされていました。まだ現段階では有力視される人物はいませんが、保守派の人物が支持を得そうですね。
そうなれば現状問題視されている移民政策転換が、さらにEU・世界へと波紋を呼ぶことになります。もちろんそれは為替にも影響してきますね。
メルケル首相退任による為替への影響
29日にメルケル首相が退任を発表した際のチャートを見てみましょう。
現時点ではあまり影響はなさそうです。むしろポンド円は、少しポンド高が進んでいます。
国民の意思を尊重した訳ですから英断とみる意見もありますしね。
次はユーロも見てみましょう!
ユーロも今のところ、特に大きな動きはありあmせん。
しかし今後どちらにとっても懸念材料の1つになります。
特にユーロは、イタリアの予算案問題・イギリスのブレグジットと問題が山積みとなっています。
そこに一番の稼ぎ頭であるドイツが不安定になったら…12月の党首選を皮切りにユーロ売りが加速することも考えられます。
ユーロが売られれば、必然的にドル円にも影響してきます。
メルケル首相の退任は、政治的な動きだけでなく為替にも大きく影響してくる出来事です。今後のドイツの動きにも注目して、しっかりと状況を頭にいれましょう!