シナリオ分析とケリー基準 | エナフンさんの梨の木

エナフンさんの梨の木

ピーターリンチをお手本とした初心者でもできる長期投資法を日々研鑽しています。

引き続き、「ケリー基準を割安成長株投資にどう活かすか?」について考えていきます。

前回はエッジ(期待値)に日本株の長期的な平均期待値(約5%)を置き、オッズをあなたが考えるベストシナリオが実現した場合のリターンにおいて検討を進めてみました。株式投資の場合は、カードゲームやルーレット、サイコロのように出目を統計的に分析することは難しいので、もちろん、正確な答えを拾えるとは最初から考えておりません。ただ、これまでもそうでしたが、数学が教えてくれる方向性については株式投資においても大いに参考になると考えているのです。

 

株価=近未来の1株利益/(金利+リスクプレミアム)

 

これは私が考えた株価を求める公式ですが、これも理論株価を求めるために考案した数式ではなく、自分が何をしようとしているのか、その方向性を差し示す数式として利用できると考えているのです。

 

同様に、今回のケリー基準

 

最適な投資割合=エッジ(期待値)/オッズ(最大リターン)

 

という考え方も、その数式が指し示す方向性を知恵に変えたいわけです。

この数式は、「期待値が上がれば買い増しを検討し、期待値が下がれば持ち分を下げる。」という常識的に理解できる方向性

 

最適な投資割合↑=エッジ(期待値)↑/オッズ(最大リターン)


に加えて、

 

オッズ(最大リターン)が上がれば、持ち分を下げ、オッズが下がれば、持ち分を増やすというギャンブラー感情的には受け入れがたいものの、「行けると思って踏み込みすぎるからみんな破滅してしまう」という重要な事実を思い出させてくれる、裏側の方向性を示している点に、とても大きな意味が感じられます。

 

最適な投資割合↓=エッジ(期待値)/オッズ(最大リターン)↑

 

数式も超シンプルですよね。こういうシンプルな数式に本質が宿るものです。

 

と、おさらいを入れた後に本題ですが、「じゃあ、株式投資のエッジやオッズをどこにどう置けばよいのか?」

今回はシナリオ分析を試してみたいと思います。

まず、私はいつも次のような考え方を持って、投資対象を選別していきます。

縦には「PEGレシオ」と書いていますが、割安か割高かの判断。横には「成長率」とありますが、期待できる今後の利益成長率です。(10%と15%の間や、25と30%の間はどこに行った?などと細かいことは聞かないでほしい。私の頭の中では、15~25%成長が期待できない時点で、10%以下と判断するし、それ以上のものは30%以上と考えている。つまり感覚的な話だ。)

 

で、いつも楽しみにしているのは、15~25%の中長期的な成長が期待できる株を例えばPER10倍前後で買えるようなチャンス(上の表では◎部分)です。そういうのが見つからない場合は、次点候補として、○の部分、15~25%成長が期待できる株が妥当な価格(PERなら15~20倍くらいかな)で買えるケースであったり、成長性が低くても(あるいは高すぎる場合も)割安(PEGレシオで0.5~0.7倍)であれば、買いの候補として検討しています。

△の部分は買いの対象にはなりません。ただ、既に保有している株が上昇し、△のゾーンに入った場合は、すぐ売り抜けるのではなく、さらに深く長期的な成長性を分析し、ケースバイケースで対応する必要があると考えています。(長期的な成長株は少々割高になったからと言ってすぐ売るのが正解とは言えない。)ただ、×部分は買いもしないし、保有株があのゾーンに入れば、迷わず売ることになります。成長が鈍化しているのにPERが25倍とか、成長性は40%以上とすさまじいが、それに対する評価はさらにすさまじく、PER100倍みたいな値がついているような場合、私は相手にしないことにしています。

 

で、仮に◎の有望株を見つけたとしてその後のシナリオは大きく3つの方向に分かれます。

まず、青コース:期待通りの成長が継続し、それに連れて、割安さが解消され、やや割高な水準まで買われていくシナリオ。

次に、緑コース:様々な外部要因や適切すぎる戦略が奏功して、期待以上に業績を拡大してくれるシナリオ。

そして、オレンジコース:全くもって期待はずれ。外部要因の変化や長期戦略の陳腐化などにより、成長は止まり、むしろ衰退が見えてしまうケース。

私の個人的な経験では案外、青コースは少なく、緑かオレンジに進むケースが多かった気がします。ただ、もし、緑とオレンジが同じ確率で発生するのであれば、期待リターン(エッジ)は跳ね上がることになります。

 

具体的に数字を入れて説明します。

1株利益(EPS)が100円の株をPER7.5倍の750円で買える大チャンスがあったとします(黄色い部分)。で、買いました。仮に、この株の今後の成長率予想が良い意味で期待を裏切ってくれて、30%になったとします。すると、まず、15%→30%への成長率予想の変化が株価を2倍に押し上げます(1500円)。次に成長率30%の株価にふさわしいPER水準(PEGレシオならPER30倍)に向けて、株価は2倍になります。結果、単に成長率の予想が変化するだけで4倍高が狙えるのです。

一方で、オレンジ矢印の残念コースをたどったとしても、もともとPERが7.5倍ですから、仮に成長率が止まって0%になっても、株価はそれほど下がりません。市場は「まぁ、こんなもんか…。」といった反応をするか。今のように地合いが悪い場合でも、下落リスクは30%程度でしょう。PER5倍以下にはなかなかなりません。

 

この場合、当たれば4倍。外せば-30%のギャンブルとなり、それが同じ確率で発生するなら、期待値は大きくプラスとなるのです。

(青1/3、緑1/3、オレンジ1/3の確率なら、期待値(エッジ)は123%)

 

更に言うと、この変化に加えて、長期にこの株を保有し続ければ、1株利益(EPS)そのものが成長しますので、利益成長に伴う株価上昇も期待できます。仮に3~5年(平均して4年)この株を保有すれば、成長率が15%なら、EPSは100円から175円に、30%なら286円と3倍近い増加となります。

 

こんな理屈で、私はテンバガー(10倍株)をいくつか取ってきたのです。(この場合、エッジは421%で実際、そのくらい儲かった時期もある。)

 

こんな複数のシナリオをどうケリー基準に当て込むか?

これが実際にやってみると、なかなか悩ましいわけです。

(すみません。シナリオを説明しているうちに時間切れになってしまいました。つづく)

 

本日も、参考になりましたら、

クリックの方もよろしくお願い致します。

 


長期投資ランキング


サラリーマン投資家ランキング

 

 

 

 

当ブログは、長期投資法について解説することを主目的としています。

その中で、参考資料として特定の企業や市場動向についても情報を提供しますが、

仮にこれらの情報に基づいて投資判断をし、 結果的に損失を被ったとしても、

当方は責任を負いかねますのでご了承ください。

株式投資に関する意思決定や実際の売買に当たっては自己責任でおねがいします。

また、このブログでとりあげる個別銘柄への長期投資法は

個人的な性格や能力、生活環境等によって向き不向きがございますので、

誰もが簡単に勝てるような投資法でない事を前提にお読みください。