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投資の基本

AI(人工知能)時代でも長期投資が有望と考える理由(株式投資におけるAIの利点と限界)

「AI(人工知能)による運用が話題だけれども、人間よりも格段にいい成績を出せるのだろうか?」「AI運用が発達したら、一般の個人投資家は利益を得られなくなってしまうのではないか?」という方は多いです。

AIの進化は著しく、将来は車の自動運転が可能になるといわれています。人間のように会話ができるコンピューターも現実的になってきており、ますます便利な世の中になっています。

一方、投資の世界においてもAIで運用するファンドなどが出てきています。個人投資家では全く勝てなくなる時代が来るのではないかと感じて心配している方も多いのではないでしょうか?

AIによる情報処理能力はたしかに驚異的であり、短期投資で人間はコンピューターに勝てなくなるだろうといわれています。しかし、長期投資に関しては心配いらないと私は考えています。

なぜなら、AIには限界があり、長期投資で一方的に人間を負かすことはできないからです。むしろ、長期投資ならば、AIも人間も両方勝つことができると考えています。

本記事ではAIによる投資の利点と限界について紹介します。さらに、AIが進化した将来においても長期投資ならば長い目で見て利益を得られると考えている理由について紹介します。

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AI(人工知能)の利点

AI(人工知能)は「人間が知能を使って行うことを代替できる機械(コンピューター)」のことです。投資の世界でいえば、「人間が知能を使って行う銘柄分析・売買の判断を代替できるコンピューター」のことです。

AI(人工知能)による投資が脅威に感じられるのは、以下の2つの特長があるからです。

  • 大量のデータを高速に処理して、素早い判断と迅速な取引が可能
  • 人間と違って感情に左右されない

それぞれについて、以下で詳しく解説します。

大量のデータを高速に処理して、素早い判断と迅速な取引が可能

2010年代に入って、AIブームが起きたのは「ディープラーニング」技術の発展によるものです。「ディープラーニング」を簡単に説明すると、過去の膨大なデータを学習することで、最適解は何かという法則性を作り出す技術です。

たとえば、投資判断に必要なデータとして、過去の株価チャートや取引高、国内外の経済指標、企業の業績・財務データ、最近のニュース、天気、Google検索数、、、、、などが挙げられます。

AIは過去のデータから株価との関係性(法則性)を見つけ出し、現状のデータ群から推測すると今後の株価がどうなるかという投資判断を行っているのです。

これらのプロセスは投資家であれば何らかの形で行っていることですが、人間の情報収集・分析能力には限界があるため、自分が得意とする一部の分析方法で投資判断しているに過ぎません。

一方、コンピューターの情報処理スピードは人間と比べ物にならないくらい速いため、膨大なデータから瞬時に判断し、高速に取引することが可能です。

このため、判断と取引スピードが求められる短期投資においてはAIが圧倒的に有利といわれています。

人間と違って感情に左右されない

情報分析・判断だけでなく、感情に流されないということも投資において重要です。

例えば、人間の場合、企業業績や財務データなどから考えて明らかに割安な銘柄があったとしても、株価が下がり続けている中で買うのは困難です。

なぜなら、人間は未来を過去の延長で考える癖があり、さらに株価が下がり続けるかもしれないという恐怖と戦わないといけないからです。さらに、自分は割安だと思っていても、自分が知らない悪材料があって本当は割高かもしれないという心配もあります。

その結果、慎重で堅実な投資家ほど株価が下がり続けている株式を安値で買うのは難しいのです。

一方、AIは感情がありませんので、収集したデータに基づいて割安だと判断できれば悩むことなく買うことができます。また、株価が割高になったものについても欲を出さずに売却して利益確定できます。

一般的に、感情に流される投資家ほど損失を生みやすいといわれます。AI(人工知能)の2つ目の利点は感情に左右されず、冷静に投資判断できることです。

AI(人工知能)の限界

一方、AIには限界もあります。

  • AIは過去の延長で予想しているだけであり、相場の転換点に弱い
  • 長期投資では将来予測の前提となる法則性が変わるため、予測しにくい

それぞれについて以下で解説します。

AIは過去の延長で予想しているだけであり、相場の転換点に弱い

AIは過去の膨大なデータを基にして、将来の最適解を推測しているに過ぎません。つまり、過去の延長で予測しているだけなので、何らかのきっかけで相場が転換する場面に弱いのです。

たとえば、米国の代表的な株価指数であるダウ平均をみてみましょう。2017年初~2018年1月までのように、米国の景気がよくて継続的に上昇している場面があります。このとき、過去のデータはおおむね良好なので、今後もAIは上がり続けると予想するでしょう。

しかし、2018年2月に米国の金利上昇がきっかけで株価は数日の間に暴落しました。過去の膨大な経済指標は良好なのに、金利上昇が起きただけで暴落したのですから、この暴落を事前に予想するのは困難です。

ダウ平均のチャート

ダウ平均のチャート(引用:SBI証券のホームページ)

また、暴落のきっかけが必ず金利上昇というわけではありません。リーマン・ブラザーズの破綻やアメリカ同時多発テロなどの突発的な出来事が理由で暴落し、相場が転換したこともあります。

何をきっかけとして相場が転換するかは事前にわかりません。これらの転換点を正確に予測するのはAIでも不可能です。

長期投資では将来予測の前提となる法則性が変わるため、予測しにくい

AIは過去の延長で予測しているため、長期投資での予測に弱いです。なぜなら、企業の競争力や事業環境は時々刻々と変化しているため、遠い将来のことほど過去の延長では考えにくいからです。

たとえば、企業の競争力や事業環境が変わる原因として以下のものが考えられます。

  • 新製品が開発され、ヒットした
  • 競合他社が画期的な製品をつくり、今までの売れ筋商品が売れなくなった
  • 天候不順で平年以下の売上になった
  • オリンピックなどによる人手不足で人件費が高騰した
  • 貿易摩擦で輸入コストが上昇した

このような場合、将来の業績は過去の延長上にありません。したがって、過去のデータから推測したAIの投資判断は失敗に終わってしまいます。

長期投資では将来予測の前提となる法則性が変わってしまうため、AIでも投資判断を的中させることが難しいのです。

AIファンドの成績をインデックスと比較

具体例として、日本株でAI運用をしているファンド「PayPay投信AIプラス(旧称:Yjamプラス!)」をみてみましょう。このファンドの運用方針は以下のようになっています。

ヤフー株式会社が提供するビッグデータの解析等を通じて市場の歪み(マーケットアノマリー)を見出し、今後の株価の上昇(市場平均を上回る上昇を含みます。)が高い確度で予測される銘柄の組入れを行なうことを基本とします。
「PayPay投信AIプラス」ファンドの特色

つまり、ヤフーが提供する膨大なデータから分析して今後株価が上昇しそうなものを組み入れることで高いリターンを狙うファンドだということです。

PayPay投信AIプラスが実際にどれだけの運用成績をおさめたのかを検証するため、日本株の代表的な株価指数(インデックス)である日経平均と比較してみましょう。

PayPay投信AIプラスが運用を開始した2016年12月20日の価格を1としたときの価格推移を調べると、下図のようになりました。

Yjamプラス!と日経平均の価格推移

PayPay投信AIプラス(旧称:Yjamプラス!)と日経平均の価格推移

2017年まではPayPay投信AIプラス(旧称:Yjamプラス!)が日経平均をややリードしていました(最大5%くらい)。しかし、PayPay投信AIプラスも2018年2月の米国金利急騰による株価暴落の影響を避けることはできず、価格は急落しました。

その後は成績が下降し、2018年8月以降は日経平均とPayPay投信AIプラスはほぼ同じ価格推移をしています。2018年2月以降の株式市場の法則性が変わり、その変化についていけなかったのかもしれません。

AI運用であっても長期的に格段に良い成績を収めることは難しいことがわかります。

長期投資を始めるにあたって、おすすめな投資信託・ETFの選び方のポイントについては以下の記事にまとめてあります。
詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
長期投資におすすめな投信(インデックスファンド・ETF)の選び方のポイント

AI(人口知能)時代も長期投資が有望と考える理由

以上のことから、AIがいくら発展しても将来予測には限界があるため、長期投資でAIが個人投資家を圧倒するということはないと考えています。

しかし、上記のAIの限界というのは人間にも当てはまります。どんなに優れた投資家でも相場の転換点を予想することは難しいし、将来の企業の競争力や事業環境がどうなるかを完璧に予測することはできません。

それでも私が「個人投資家にとって長期投資は有望である(リターンを得られる)」と考えるのには理由があります。

なぜなら、「長期投資は企業の稼ぐ利益の一部を配当金や売却益という形で得るもの」であり、「長い目でみれば経済全体は拡大し続ける」からです。

それぞれの意味について解説します。

長期投資は企業の稼ぐ利益を配当金や売却益という形で得るもの

株式というのは企業の共同オーナー権です。企業が稼いだ利益の一部は配当金として株主に還元されます。残りは企業の内部に留保されますが、将来の業績拡大のために使われるため、株価上昇に伴う売却益という形で株主に還元されます。

そのため、長い目でみれば株式の価値はこれまでに稼いだ利益(企業の資産)と将来稼ぐと考えられる利益の合計に連動するはずです。

つまり、将来にわたって赤字にならずに利益を出し続けるであろう会社に投資すれば、株価の上昇や配当金という形で利益を得られることが期待できるのです。

長い目でみれば経済全体は拡大し続ける

製品を加工する、需要のあるところに輸送するなどの経済活動は価値を生みます。生み出された価値(利益)を再投資することでさらなる価値が生み出されるので、長い目でみれば企業全体の利益は拡大し続けます。

そして経済規模の拡大に伴って企業全体の利益は向上し、長い目でみれば株価は平均的に上昇します。つまり、長期投資における平均的なリターンはプラスになることが見込まれるのです。

具体例として、世界経済の中心地であるアメリカの代表的な株価指数として、S&P500指数の例を見てみましょう。

S&P500指数とは、米国NASDAQに上場している株式の中から、代表的な500銘柄の株価を選び、株価を平均した値のことです。日本でいう、日経平均とかTOPIXのようなものです。

下図は、S&P500指数と、1株益(EPS)の推移です。

S&P500指数とEPSの推移

S&P500指数とEPSの推移(Standard & Poor’sのデータを基に作成)

EPSが大きいほど、企業が多くの利益を生み出していて、業績が良いことを意味しています。

EPSは激しく上下しながらも、長い目でみれば増加し続けています。そして、EPSの増加に伴って、S&P500指数は長期的に上昇し続けています。

このように、長期投資では、企業の成長に投資していますので、業績の向上とともに、長い目で見れば平均的にプラスのリターンを得ることが可能なのです。

つまり、長期投資では平均的にプラスになるため、個人投資家はAIに勝とうとする必要はありません。長期投資ならばAIも個人投資家も両方勝つことができるのです。

AI時代になったとしても、長期投資をすることの有効性は変わらないと考えています。

投資の基礎知識についてのおすすめ記事はこちら:
株・投資信託の初心者におすすめな長期投資戦略のまとめ。損しないための始め方
長期投資を始めたいというあなたへ。当記事では「投資初心者が知っておくとよい投資の基礎知識と投資戦略、投資初心者におすすめな証券会社」についてまとめました。これを読めば長期投資に必要な考え方がわかります。どうぞご覧ください。

まとめ

本記事ではAIによる投資の利点と限界についてまとめ、AIが進化した将来においても長期投資が有望である理由について紹介しました。

短期投資ではAIの圧倒的な情報処理能力に人間は勝てませんが、長期投資ではAIも人間も同じ土俵に立っており、必要以上に恐れる必要はありません。

また、長期投資は企業が稼ぐ利益を享受する手法なので、長い目でみれば平均的にプラスのリターンを得られる可能性が高い手法です。AIが発達した将来においても個人投資家が利益を得られるのは短期投資ではなく、長期投資です。

長期投資では早く始めるほど利益を得やすくなります。投資に興味がある方は、最初は少額でもいいので実践しながら学んでいくことをおすすめします。

少額から投資したいなら、単元未満株を使うのもおすすめです。単元未満株なら1株から売買できますので、通常の単元株取引(100株単位)よりぐっと投資しやすくなります。

私の場合、SBIネオモバイル証券を使って、1~3株くらいずつ定期的に積立投資しています。SBIネオモバイル証券を使えば、格安な手数料で1株ずつ売買できるので、リスク小さく始められて便利です。

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