新型コロナ問題「期末決算が怖い」銀行界の憂鬱

3/7(土) 9:30配信

毎日新聞

新型コロナ問題「期末決算が怖い」銀行界の憂鬱

いつもに比べ人通りの少ない銀座の歩行者天国=東京都中央区で2020年2月29日、喜屋武真之介撮影 

 新型コロナウイルスの感染拡大が経済に深刻な影響を及ぼしています。金融ジャーナリスト、浪川攻さんが金融界に与える影響について現状を報告します。【毎日新聞経済プレミア】

 新型コロナウイルス問題が銀行業界にも重たくのしかかりつつある。従業員の感染リスクもあるが、3月末の決算期が近づくなかで、決算の収益状況への影響が見通せなくなってきたからだ。銀行関係者は感染拡大の行方に一段と神経をとがらせている。

 新型コロナウイルス問題では、2月26日に三菱UFJ銀行の支店行員の感染が確認され、メガバンクはじめ各銀行で感染対策の緊張感がいよいよ高まってきている。同時に、今年度決算の行方にも懸念が強まっている。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、すでにさまざまな業種で影響が広がっているからだ。

 ◇観光業界の痛手

 なかでも、インバウンド需要拡大の恩恵を受けてきた業種では、その反動は激しい。すでに愛知県で旅館業の倒産が報じられたが、全国の観光地で同じような厳しい事態が広がっている。

 たとえば、九州地方の温泉街では、「昨年、日韓問題で韓国からの旅行者が激減し、それを補うべく中国からの旅行者の勧誘に力を入れていたが、ダブルパンチになった」と旅館経営者が頭を抱えている。

 この経営者は、急きょ国内需要の発掘のため東京に出向いて大企業にイベントや社内旅行の誘致活動をしたものの「今度は日本企業が出張すら控える姿勢になってしまった」とお手上げの風情である。

 ◇融資先の「信用コスト」増大へ

 こうしたなかで、銀行業界では「決算期末に向けて、予防的な意味で貸し倒れ引当金の積み増しを迫られるリスクが高まった」(関西圏の地銀幹部)という声が広がり始めている。なかでも、感染問題の影響が大きい観光業、部品を生産・供給するサプライチェーン、飲食業などの融資先企業の状況に対して注意を払っているという。

 銀行業界はこの数年、不良債権の増加が抑えられ、逆に過去に積んだ貸し倒れ引当金を減らして利益に参入する戻入益が目立っていた。融資先に対する「信用コスト」が低く抑えられてきたのである。

 しかし、今年度は、こうした戻入益がピークアウトし、次第に貸し倒れ引当金を積み増す傾向が出始めていた。それに加え、今回の新型コロナウイルス感染問題でさらに貸し倒れ引当金を積み増すリスクが高まっている。銀行の今年度決算の収益に下押し圧力となることは避けられそうもない。

 ◇「追加金融緩和は逆効果」

 なかでも、地銀のなかには観光業への融資の比重が高いところがあり、重苦しいムードが強まっている。「悪影響が著しい企業、事業者には、公的な支援制度を一日も早く導入してほしい」という声も上がり始めている。

 なかには、「日銀総裁は必要があれば追加の金融緩和をする姿勢を見せているが、今回は金融政策でサポートできるような話ではない。金融緩和は金融業にとって痛手が深まるだけだ」として追加金融緩和への警戒感も漂い始めた。

 3月の決算期末を間近に控えて、銀行業界の憂鬱は広がり続けている。新型コロナウイルス問題が一刻も早く終息期に入ることを願うばかりだ。

 

 

8316 三井住友    3,176    -133

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