パラダイムシフト | エナフンさんの梨の木

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ピーターリンチをお手本とした初心者でもできる長期投資法を日々研鑽しています。

「PERが高い時が買い時?意味がわからん。」昨日の記事を読んでそう感じている方もいらっしゃるかもしれません。以前、読者さんからそんなコメントをいただいた時は、面倒くさいので流してしまったことがありましたが、折角ですので、この機会に詳しく説明したいと思います。(その時は既に底練り局面が終わっていたので、説明しても意味がないと考えた。)

 

まず、理解していただきたいのは、相場の大幅な下落局面では、あるパラダイムシフトが発生するということです。パラダイムシフトとは、「ある時代・集団を支配する考え方が、劇的に変化すること。」です。わかりやすい例で言うと、人類は天動説を信じていましたが、ある日を境に劇的に地動説を信じるようになった。みたいな話です。

 

平時、私たちは株価の根拠を近未来の収益に求めます。SNSや掲示板でも、「利益の伸びがすごい」とか「決算の数字が悪い」等と盛り上がりますよね。けど、今のようにガンガン収益が下がっていくと、近未来の収益からは妥当な株価を判断することが出来ません。一時的に赤字になったからといって、利益が0なら株価も0が妥当とは考えません。永遠に0なら株価も0ですが、それが一時的な現象なら、人々の目線はもっと遠くを見て、「将来100億は利益を出しそうだから、時価総額は1000億円くらいはないとおかしいよね・・・。」と長期視点に代わるのです。(空売りで失敗するのは、このパラダイムシフトが理解できないケースが多い。)

 

さらに、リーマンショック直後や今回のように、あまりにインパクトの大きな変化が襲うと、その長期視点からの算定も怪しくなってきます。「再び、以前のように元に戻るのか?」「仮に3年かかって元に戻ったとして、その時、投資先の企業は今までと同じ地位にいるだろうか?」といった疑問が不安となり、それまでクリアに見えていた未来は霧の中に消え、長期視点からも株価の算定根拠を失うのです。

 

ただ、一つだけ言えることは、いつまでもそんな負のスパイラルが続くと、「国家や金融システムが維持できない」ということです。「全体の共通の意志として、株価を下支えしないと資本主義の秩序を失う。」


そこで、各国政府は本気モードで株価を買い支え、金融緩和を限界まで実施し、ルールを変えてでも空売りを抑え込もうとします。

 

その際に何の根拠もないと、国民の批判をうけ、支持を得られませんので、買いの根拠として純資産価値あたりがちょうど案配がよい。というわけです。図にすると下のイメージです。

 

 

平時はPER等、収益を根拠に株価は変動しますが、あるタイミングでパラダイムシフトが発生し、純資産価値を根拠に底練りを始める。PERは算定根拠ではなくなるので、その数字は信用できなくなり、通常、大きな値を示す。

で、再び収益が拡大してくると、純資産価値ではなく、収益を根拠に株価は変動するようになる。と考えられるのです。

 

ただし、これは全体の話であって、個別にはたとえ不景気でも、あるいは疫病が蔓延しても、元気な企業は元気ですし、逆にリスクを取りすぎていた企業の中には、あっという間に倒産するケースも出てくるわけで、優勝劣敗がはっきりするでしょう。底練り局面では個別株投資が有効と考える根拠です。


昨日や今日は政策的な買いと、空売りの買い戻しが中心ですから、悪い株ほどよく騰がりますが(いわゆる踏み上げ。ファンダメンタルズの観点からは空売り連中の判断の方が正しいかもしれない。ただ、人類を相手にやり過ぎはいけない。)、今後はまた違う展開になるのではないでしょうか?