ロング・ショート戦略 | エナフンさんの梨の木

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ピーターリンチをお手本とした初心者でもできる長期投資法を日々研鑽しています。

悪い株ほどよく騰がり、良い株はちっとも騰がらない。そんな感想を持っている人もいらっしゃるかもしれませんね。日経平均株価は昨週末と比べて、たった3日間で3000円(率にして18%)も上昇しましたが、優良株はそれほどでもなく、業績悪化が懸念されている企業に限って大上昇しています。なぜ?

 

昨日の日経新聞朝刊に答えが書いてありました。

日経新聞記事「ファンドの銘柄整理 連鎖」2020.3.25

 

超簡単に説明すると、①このところの市場混乱でダメージを受けたヘッジファンドが保有銘柄の大掛かりな整理に動いている。②彼らの多くはロング・ショート戦略を採用しているため、彼らがよいと思って買っていた銘柄が売られ、彼らが悪いと思って空売りしていた銘柄が買い戻されている。③彼らはコロナショックで急激に運用成績が悪化しており、多くの投資家から解約請求を申し込まれている。④現金確保のために、手じまいせざるを得ない状況に陥ってしまった。ということです。

 

ロング・ショート戦略を知らない方のために少しご説明しますと、例えば同じ業種で、割安と考える株(良い株)を保有し、割高と考える株(悪い株)を空売りしておくと、仮に、全体相場が上昇する時は、良い株ほどよく騰がり、悪い株はそれほど騰がりません。そのため、上昇局面ではその差分だけ儲かります。

逆に下落局面では、良い株はそれほど下がらずに、悪い株ほどよく下がるため、その差が儲かる。

つまり、市場全体がどっちに転んでも儲けられる、という前提で投資をしているのです。

 

ところが、今回のように急激な変化がおこると、良いと思っていた企業ほど人気がある分、利益確定の売りが大きくなり、悪いと考えていた企業は、そもそも人気がないため、それほど大きな売りは出ません。そのため、彼らの想定の全く逆の事が起き、良い株ほどよく下がり、悪い株ほど下げ幅が小さいというおかしな現象が起こるのです。こうして急激に運用成績が悪化し、ポジションを解消しようとするヘッジファンドが急増したために、さらに良い株は売られ、悪い株は買い戻される悪循環に陥り、そこに日銀の買いも手伝って、悪い株がけん引する不思議な上昇相場がやってきたのです。

 

リーマンショックの時も同じ現象がありました。ちょうど、リーマンショックの1年ほど前、サブプライムローン問題が広く知れ渡り、株価は大きく下落を始めていたころの事です。既にほとんどの保有銘柄を売却していた私は、それでも少しは株を持っていないと相場観が失われると思い、シチズン株を保有していました。当時ソーラー電波時計が流行っていて、シチズンはこのジャンルで圧倒的に技術が進んでいたんですね。ただ、ちょっと割高でした。一方、セイコーはソーラー電波時計の技術では遅れており、割安でした。

 

そんなある夏の日、突然シチズン株が急騰し、セイコーが売られたのです。

何事かと思いましたが、後で、あるロング・ショート戦略を採用していたヘッジファンドが資金繰り難から、ポジション解消に動いていたと分かったのです。(もっとも、何をもって割安かという部分では私とは見解が異なっていたわけだ。私は技術優位性からシチズン押しだったが、このファンドはPERによる判断からセイコー押しだった。)

 

空売りをやっていて、今回の大上昇でダメージを受けた方々には大変、申し訳ございませんが、ファンダメンタルズの観点からは、あなた方は正しいかもしれません。けど、世界中の人類が結束して、新型コロナに対抗しようというときに、人類を敵に回して、空売りで儲けようという発想が人間としてどうか?と思うのです。その挙句、大損・・・。

当ブログ記事「最悪の負けと勝ち」2020.3.16

 

当時と比べるとロング・ショート戦略は主流と言っていいレベルに増えていますから、この巻き返しが、いったい、いつまで続くのか?私にはわかりません。ただ、状況が悪化し、ストーリーが崩れたにも関わらず保有を続け、売り場に困っている銘柄をお持ちの方にはチャンスでしょう。私も昨日、ある不動産関連の新興株を売却しました。1割ほど損が出ましたが、絶望的な状態でしたのでこの程度の損で済んでラッキーです。