バイデン次期米大統領が、証券取引委員会(SEC)委員長にゲイリー・ゲンスラー氏を指名する可能性が高いという。オバマ政権で商品先物取引委員会(CFTC)の委員長を務めたゲンスラー氏が同ポストに就いた場合、暗号資産業界にはどう影響するだろうか?

デジタル資産業界にとってはうれしいニュースだ。

彼と一緒に仕事をした経験から、テーマがデジタル資産であれ、スワップ市場であれ、市場構造であれ、彼は暗号資産の未来について思慮深く、寛容であり、見識ある規制当局がイノベーション促進に果たせる役割を理解していると断言できる。また単なる応援者になることもないと約束できる。

ジェフ・バンドマン(Jeff Bandman)氏は、バンドマン・アドバイザーズ(Bandman Advisors)の創業者兼社長であり、CFTCの元高官。

暗号資産に対する理解

まず第一にゲンスラー氏はよく理解している。彼は明らかに、テクノロジー、政策、経済など、多くのレベルにおいて暗号資産業界を理解することに熱心に取り組んできた。

議会でデジタル通貨政策と規制について証言し、MIT(マサチューセッツ工科大学)ビジネススクールでは、ブロックチェーンとデジタル通貨について教え、国内外で多くの公的・民間の議論に加わってきた(そのうちのいくつかには私も参加し、意見を交わした)。

彼は、SECの責任者たる者として、望める限り最もデジタル資産に精通し、関与してきており、すぐに業務に取りかかれる状態で就任することになる。

市場構造

私は、ゲンスラー氏は市場構造を優先順位の上位に置く可能性が高いと考えている。法執行機関やM&A(合併・買収)などの経歴を持つ過去のSEC委員長とは異なり、彼の経歴は、市場・金融テクノロジー・政策にある。

金融危機後の2009年にCFTC委員長に就任、2009年のG20ピッツバーグ・サミットでの合意のもと、店頭(OTC)デリバティブ市場の大幅な改革を指揮した。また、金融システムを再構成することになったドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)の立案にも関わった。CFTCは、ドッド=フランク法への対応として、65を超える規則を可決した。

控えめに言っても、業界はその成果を必ずしも好意的に受け取ったわけではなかった。CFTCによる改革はスワップ市場に大打撃を与えるとの批判は数多かった。

しかし、アメリカのスワップ市場は大まかに言って、依然として活気があり、流動性があり、信頼されている。新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた2020年3月でさえも、効率性と回復力を保っていた。投資家や他のステークホルダーは、十分に規制された市場を信頼するという彼の確信を強固なものにするだろう。

ゲンスラー氏は、スワップ市場の既存勢力が享受していた影響力に配慮しつつ、(強力な規制フレームワークの中で)挑戦者や革命児に可能性を与えようとした。暗号資産業界では、「既存勢力」はスワップ市場とは大きく様相が異なる集団だが、このダイナミクスは繰り返されるだろう。

彼は進歩的な人たちからの強力な信任と期待を背負うことになる。つまり、投資家保護に重点を置き、暗号資産を用いた資本形成の促進と、暗号資産が規制を回避するための抜け道や裏口とならないようにする必要性のバランスを取ると期待できる。

私は、暗号資産の市場構造とインフラは、従来よりもはるかに明確になると期待している(普及と投資家の信頼を促進するような規制上の明確さだ)。万一、業界を唸らせるようなものがないとすれば、私はショックを受けることになるだろう。

ビットコインETFの行方

ゲンスラー氏のもと、SECはついに個人向けビットコインETF(上場投資信託)を許可すると私は考えている。彼は、スポット市場におけるビットコインの流動性、価格発見と価格形成が行われる特定の市場の整合性に関するデータを綿密に検討し、納得するだろうと期待している。

今後の見通しは「私の任期中に悪いことが起きないようにしたい」というものから、「どうすれば安全にアメリカの投資家に提供できるか?」に変化する可能性がある。同様に、スポット市場の監督によって、SECの役割はより拡大する可能性がある。

業界との窓口となるFinHub(Strategic Hub for Innovation and Financial Technology)の役割も強化されるだろう。FinHubは先日、SEC委員長直下の組織に格上げされた(LabCFTCの2019年の格上げと同じような形となった)。彼は、当初の目的だけでなく、SEC内の組織の壁を超えて、政策の立案と遂行をより集中的に推進するためにFinHubを使うかもしれない。

アメリカの国際協調アプローチ

国際的にはどうなるだろうか?

2014年に終了したCFTC委員長としての任期中、他国の規制当局との関係は、控えめに言っても緊張感のあるものだった。当時を知る国際的な規制当局の関係者は、すでにこの件について私に質問してきている。彼がスワップ市場に対するアメリカのアプローチを他の法域にも適用しようとしたことに触れ、同じことが起きるのではないかと懸念している。

私は、国際的な対立は、ゲンスラー氏の暗号資産規制へのアプローチの特徴にはならないと考えている。強力な国際協調と協力が期待できると信じている。暗号資産規制は、国際的なスワップ市場とは大きく異なる。

まず、バイデン政権は国際政策や国際関係において、多国間協調主義を取ると広く期待されている。SEC委員長が異なるアプローチを取れば、際立って異色の印象を与えることになる。

次に、彼が率いたCFTCは、2008年の金融危機の後、店頭市場改革を行った最初の、あるいは複数の最初の規制当局の1つだった。

国際的摩擦の多くはアメリカが先行したために発生したもので、CFTCの規則、ガイダンス、解釈は、規制の空白を埋め、規制逃れを抑止する、一国にとどまらない効果を発揮した。

2021年の暗号資産規制の国際環境は、2011年頃の店頭スワップとは大きく異なる。あらゆるものに適用できるワンパターンなアプローチは存在しないが、多くの法域では厳格で革新的な暗号資産の規制フレームワークがすでに展開されている。EUなどの地域でも、包括的な提案が検討されている。

さらに、金融安定理事会(FSB)、国際決済銀行(BIS)、マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)、G7、G20、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)、BIS決済・市場インフラ委員会(CPMI)、証券監督者国際機構(IOSCO)などで、数多くの国際的な作業が進められている。

グローバルなデジタル金融環境には、さまざまなギャップが依然として存在し、規制逃れの可能性もあるが、彼がスワップ市場で見つけたような規制の真空状態に直面することはないだろう。

とはいえ、SECが国際的な規制フレームワークにおいてその見解を広めることを控えたり、より強力な協調を主張することに消極的になることを期待すべきではない。

さらにゲンスラー氏は、CFTC時代にドッド=フランク法のもとで議会から受けた、行動のための明確な法的義務を暗号資産について負うわけではない。なぜなら、議会は暗号資産に関する法律をひとつも可決していない。法律、あるいは他からの監督がないなか、彼はかなりの裁量を発揮することになる。

スポット市場

一方、答えの出ていない大きな問題がある。ゲンスラー氏は、証券ではない暗号資産のスポット市場、そしてその取引を規制・監督するためにSECへの信任を議会に求め、獲得できるだろうか?

現在、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のような証券と見なされていない暗号資産の取引を監督するアメリカの規制当局は存在しない。CFTCは執行の権限を持っている。例えば、CFTCが直接規制するデリバティブ市場での歪み(あるいはもっと悪いこと)の原因となるスポット市場での詐欺や、市場操作があった場合に執行できる権限だ。だがそれは、規制や監督の権限とは違う。

財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、アンチマネーロンダリング(AML)と銀行秘密法(BSA)の観点から権限を持つが、これは市場の整合性、業務遂行、安全性、健全性を監督する権限とは異なる。

SECとCFTCは、それぞれが規制する取引所や市場に対して、そうした監督を行う。これが、アメリカの枠組みに大きな規制上のギャップを存在させている。

彼は権限を議会に求めるだろうか? 議会は権限を認め、必要なリソースを提供するだろうか? それは個人向けビットコインETFにとっての「入場料」となるのだろうか? 仮にそうなるとしても、一晩では達成されない。

今後の見通し

グローバルスワップ市場の構造を作ったゲンスラー氏は、暗号資産市場の規制構造を作るチャンスを生かす可能性が高い。

もちろん、SEC委員長は一方的に行動できない。彼のビジョンや構想を実行するには、他の委員の賛成、他のステークホルダーのサポートが必要となる。

暗号資産以外の優先事項があるかもしれない。新型コロナウイルス感染拡大をはじめ、リソースや注意を必要とする新政権の政策などだ。それでもゲンスラー氏は、独立した組織を牽引し、同時に複数の問題を遂行できる能力があることを証明している。

暗号資産業界の他のあらゆることと同じように、興味深く、予測不能で、紆余曲折を十分にはらんだものとなるだろう。ただし、業界が受け取る規制上の明確さは、求めているものとまったく同じものではないのかもしれない。

参考資料:https://www.coindeskjapan.com/95426/ 

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