「現金が買われている」。そんなやり取りがネット上で話題になったのは、4月22日ごろ。フリーマーケットアプリ「メルカリ」上では5万円が5万9500円で、20万円が24万円で出品されていました。
メルカリ広報によると、同社では元々貨幣の出品が禁止されていました。ところが利用者から「希少価値の高い貨幣の出品を認めてほしい」との要望を受け、今年2月中旬ごろ、現行貨幣の出品を許可。「ゾロ目の1万円札」や「穴の位置がずれた5円玉」などが売りに出されていたそうです。
ところが、思わぬ形で今回の問題が発生します。
発覚後、メルカリは「利用規約で禁じているマネーロンダリングにつながる可能性がある」とのことから、再び全ての貨幣の出品を禁じました。
同社の広報担当者は「利用者の期待に応えようと貨幣のやり取りを解禁したが、想定外だった」としています。その後、JR東日本の電子マネー「Suica」が、内蔵された額以上の金額で売られるケースも増えたため、メルカリではサイト内の監視を強化。見つけ次第、削除する方針だといいます。
最大手のオークションサイト「ヤフオク!」も同様に、貨幣の出品を禁じています。ところが「コレクター商品となり得る貨幣」については「全てを禁止するのは難しい」として、現時点では出品を認めています。
記念貨幣ならまだしも、何の変哲もない貨幣がなぜ、額面以上の価格で取引されるのでしょうか。その一つの要素が「クレジットカードの現金化」です。
クレジットカードには「キャッシング枠」と「ショッピング枠」がありますが、メルカリで現金を購入してクレジットカードで支払った場合、ショッピング枠で現金を手に入れることができることになります。
これが「クレジットカードの現金化」であり、ほとんどのカード会社の規約違反にもなります。
クレジットカードを現金化したい人の中には、借金に苦しむ人が多くいる、という指摘もあります。借金問題や多重債務に詳しい、全国クレサラ・生活再建問題被害者連絡協議会の事務局長、秋山淳さんに話を聞きました。
すぐに現金が必要になる場面はどのような事態なのか。秋山さんは、個人の場合は「生活費」「医療費の支払い」「ギャンブル代」などが考えられるといいます。
貸金業法では消費者金融会社による「年収の3分の1超」の現金の貸し付けは禁じられています。そのために消費者金融から追加で借りることができない人が、「クレジットカードの現金化」に手を出している可能性があるそうです。
クレジットカードも現金も同じ借金に見えますが、何が違うのでしょう?
秋山さんによると、そこには何カ所もの消費者金融からお金を借りる多重債務の問題があると言います。
消費者金融から借金をして、それを返すために別の消費者金融から別のお金を借りる。その自転車操業が「年収の3分の1超」ルールで行き詰まると、消費者金融が使えなくなります。
とはいえ何らかの形で借金は返済しなければいけない。ケースバイケースですが、借金の返済が二度滞るといわゆる「ブラックリスト」入りすると、クレジットカードの更新などにも支障が出る恐れがあります。秋山さんは、そのような事態を避けるため、「クレジットカードの現金化」に手を出す人がいると見ています。
加えて、「借金の返済が滞ると、家族・会社にバレてしまい、そのことを恐れる人も多い」と秋山さんは言います。
「借金をしている相手は消費者金融ばかりではない。ヤミ金からお金を借りている人もいるだろう」