2021年に急拡大した暗号資産市場。世界的に分析すると、その現状はどうなっているのだろうか。そして2022年はどう動くのだろうか。暗号資産・DeFi(分散型金融サービス)の現状を分析し、その展望を考えるオンラインイベント〈『暗号資産』の地政学──2022年の「クリプト市場」を見通す【Powered by Chainalysis】〉が11月29日に開催された。

イベントでは、暗号資産取引の分析・リスク検知やコンプライアンスなどに定評がある「チェイナリシス(Chainalysis)」の山田陽介氏と重川隼飛氏の報告をもとに、東京ハッシュ代表取締役社長の段璽氏、メルカリR&Dブロックチェーンの栗田青陽氏が、2022年の暗号資産市場の見通しを議論した。モデレーターはcoindesk JAPAN編集長の佐藤茂が務めた。

チェイナリシスはブロックチェーン分析を専門にし、暗号資産事業者や金融機関、政府機関にリスクのある暗号資産取引を検知・分析するためのソリューションを提供している。

日本カントリーマネージャーの山田氏によると、同社では暗号資産のアドレスを調査し、アドレスの名付け(どのようなサービスか)やクラスタ化(どのサービスに属しているか)を行い、それをもとに調査支援や取引モニタリングのSaaSや顧客分析や市場調査のためのデータを提供している。顧客は60カ国に500以上。国内では取引所向けのAML(アンチ・マネーロンダリング)対策でコインチェックをはじめ約30%のシェアがあるほか、金融機関や官公庁でも採用されているという。

「暗号資産導入指標」は昨年比で880%以上成長

イベントではまず、チェイナリシスが毎年出している世界の取引を分析したレポートに基づく発表があった。そこで重要な指標として発表しているのが次の2つだ。

  • Global Cryptocurrency Adoption Index(暗号資産導入指標)
  • Global DeFi Adoption Index(DeFi導入指標)

山田氏は暗号資産導入指標について、どれだけ暗号資産を受け取ったか、どれだけリテール市場で取引されているか。P2Pでどれだけ取引されているかをランク付けしたものだと解説。同指標の合計値は昨年比で880%以上成長しており、「本当にわかりやすく、世界全体で暗号資産が導入されたと捉えている」と述べた。

暗号資産導入指標トップの国はベトナム。続いてインド、パキスタン、ウクライナだった。一方、DeFi導入指標のトップはアメリカが1位。2位以下はベトナム、タイ、中国と続いた。

「北米市場が急成長した起爆剤は?」という質問を受け、山田氏は次のように答えた。

「DeFiの急速な伸びが確認されている。イーサリアム(ETH)もここ1年で大幅に上がっているが、DeFiの盛り上がりが要因になっている。特に北米は新しいモノに先進的ということもあって、暗号資産全体の盛り上げに一役かっている」

もう一点、大きな動きを見せたのが中国だ。佐藤編集長は「中国では来年デジタル人民元(CDBC)の導入が予定されているが、中国政府は暗号資産の規制を強化した。規制はなぜ起きたのか」と問いかけた。

段氏は、「中国政府の産業政策は実体経済を重視している。暗号資産のような金融経済は、いかに実体経済に貢献できるかということで監視されている。2017年のICOバブルで暗号資産市場が予想以上に拡大したものの、社会不安定に繋がる事件が頻発した」とした上で、「しかし、実体経済への貢献は見いだせない。そういう認識で、中国政府は禁止にかじを切った」と続けた。

「それ以降、暗号資産を禁止する方針は変わっていない。今年は石炭価格高騰の影響があり、脱炭素のために一部地域では計画停電が発生している。そういった背景の下、実体経済に貢献できず、電力を消耗するマイニング業者は、容赦なく排除された」(段氏)

また段氏は、「暗号資産市場は、中国を含めて今年も活発になり、世界中の投資家の参入が増えた。そこで中国政府の警戒心が再び高まった。経済発展のため、大量雇用を確保するために、金融業より製造業を重視している中央政府では、暗号資産の存在を容認する余地がなくなった」と加えた。

DeFiはどう動いた?

DeFiについてはどうだろうか。分散型金融と訳されることが多いが、イーサリアムなどのブロックチェーンに搭載された「スマートコントラクト」で金融機能の自動制御を実現するものだ。このDeFi市場に大量の資金が流れ込んでいる。DeFiに流れている金額は、Total-Value-Lockedという指標でいうと、日本円で約28兆円。暗号資産全体の時価総額は約270兆円なので、DeFiはその10%程度の規模になる。

金融基盤が確立している経済大国でもDeFiが利用される背景について、栗田氏は「金融インフラが整っている国でもDeFiが使われる背景には、高い金利、投機需要がある」と指摘。注目が集まったきっかけは、管理者がいないスマートコントラクトの意思決定参加権が得られる「ガバナンス・トークン」の人気沸騰だったと説明した。

一方で、ベトナム、タイ、中国、インドなど、アジアでDeFiの導入が進む背景は?

重川氏は「国内の暗号資産の位置づけが揺らいでいる、国内のレギュレーションが厳しい、ぐらついているといった事情がある。DeFiの特徴として、アカウントを作る手間がない、誰でも参入できるという良さがある。そうすると、規制から離れてできてしまうという便利さがある。それが要因の一つになっている」と解説した。

「拡大を続ける北米、減速する東アジア」

続いて地域ごとの分析が発表された。

北アメリカ

北アメリカは取引量が世界シェア18%で2番目の地域。アメリカが暗号資産導入指数で8位、DeFi導入指標で1位だった。一方でランサムウェア攻撃の最大のターゲットになっている。

ラテンアメリカ

ラテンアメリカは取引量の世界シェアが9%(6番目)。ベネズエラ、アルゼンチン、ブラジルがトップ20になっている。国によって、利用されるサービスタイプや利用のされかたが、大きく異なる。たとえばブラジルでは大規模投資家のDeFiサービスが活発。ベネズエラでは草の根的なP2P取引が多い。

東アジア

グローバルでの市場シェアは大幅に低下。暗号資産導入指標では、中国13位、香港39位、韓国40位、日本82位。シェア低下の理由は、中国の規制強化。ただ冬季北京オリンピックに向けてCBDCの実証実験は進んでいる。

中央・南アジア、オセアニア

取引量は前年比706%増加、世界シェアが2%増加。暗号資産導入指標の上位3カ国(ベトナム、インド、パキスタン)が含まれる。ベトナムは、技術的な知識のある若者が多く、既存の金融商品が限られる、などの点から草の根的に暗号資産が広がっている。

アフリカ

いまのところ世界最小マーケット(3%)だが、取引量は前年比1200%成長。暗号資産導入指標のトップ20に、ナイジェリア、ケニア、南アフリカがランクイン。アフリカ全体でみるとP2Pプラットフォームが成長した。いくつかの国で既存の金融機関が取引所への送金を禁止していたり、自国通貨の信頼度が低かったり、海外送金手数料が高かったりといった理由が考えられる。

中央・北・西ヨーロッパ

暗号資産の最大の市場。約100兆円規模の取引。2020年夏以降、機関投資家の投資が増えている。大規模投資の送金の半数がETHもしくはERC-20。多くの投資家はDeFiのステーキングでリターンを得ている。ETH、ステーブルコインの取引も多い。

大きく伸ばす地域もある中で、日本のランキングが82位に下がっている。この状況はどう考えるべきだろうか?

山田氏は「ヨーロッパやアフリカなどが伸びている中で、残念ながら日本はあまり伸びていないという現実。調査自体はオンチェーンの情報を集めているので、日本の取引所内で完結している取引は出てこない。そういったものが日本は多かったりする可能性はあると思う」とフォロー。

重川氏は「DeFiについては、ハードルの高さがあるのかと思っている。暗号資産では2~3年前のレファレンスが通用しない。最新のレファレンスはたいてい英語だ。日本は翻訳大国だから、日本語の書籍が出回ってじわじわ広がっていくのが普通だったが、この世界は翻訳のスピードがもはや追いつかない。もちろん、DeFi自体が規制のグレーゾーンというのもあると思うが」と話した。

暗号資産「ユニークな草の根的広がり」も

こうした分析を踏まえた、今年の総括と展望は。山田氏は暗号資産の動きが世界的な現象になり、154カ国で有意義な活動が行われている現状を改めて強調。今年は特に開発途上国や新興市場で大きな動きがあり、中央・南アジアでの草の根的な広がりがユニークだったと総括した。

また来年の展望については、DeFi関連の動きが開発途上国で活発になり、ビットコインが法定通貨として採用の可能性もあると述べた。また、日本ではNFTの普及加速も予想。今後は、マネロン対策などのコンプライアンスも非常に重要になるだろうと述べていた。

2021 Geography of Cryptocurrency Report

本イベントのプレゼンテーションの内容はチェイナリシス(Chainalysis)が発表した、2021年版「Geography of Cryptocurrency(暗号資産の地理学)」の一部である。本レポートでは新興市場におけるダイナミックなトレンドに焦点を当て、世界中の国や地域ごとに暗号資産の普及具合を分析している。

coindesk JAPANでも本レポートに関連する記事を配信している。

暗号資産普及でトップにランクインしたアジアの国々:チェイナリシス・インデックス
https://www.coindeskjapan.com/125205/

北米が東アジアを抜いて世界2位の暗号資産市場に──DeFiの急拡大がけん引:チェイナリシス
https://www.coindeskjapan.com/126297/

チェイナリシス(Chainalysis)とは

ブロックチェーン分析を専門とする会社である。

金融機関や暗号資産事業者、政府機関に対し、リスクのある暗号資産取引を検知や金融犯罪が起きた際にその動きを追跡するためのソリューションを提供し、ブロックチェーン業界の健全性の向上に貢献している。

チェイナリシス(Chainalysis)が行う調査・分析

暗号資産取引の流れや、アドレスがどのような組織に紐づくのか専門的に調査・分析をし、暗号資産取引が違法なものに繋がっていないかを明らかにする。

  • アドレスの調査
    公開サイトやダークウェブ、暗号資産サービスの調査、関係者からの情報提供などからアドレスが誰のものかを突き止める
  • 暗号資産の分析
    取引の流れのパターンを分析し、関連する複数のアドレスをクラスタ(グループ)化、具体的なエンティティ(持ち主)に紐付ける

チェイナリシス(Chainalysis)の商品

ブロックチェーンの専門的な分析データを基に、犯罪捜査やコンプライアンス用途での製品提供の他、市場や顧客の分析などのビジネス用途でのデータ提供を行っている。



参考資料:https://www.coindeskjapan.com/132458/ 

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