12月27日のyutoriの上場で2023年のIPOもすべて上場しました。来年のIPOの新規承認も出ていますが、今後のために今年のIPOを振り返ってみたいと思います。

【IPOサマリー】2001年以降のIPO情報を一覧、グラフ表示

当方のサイトでは2001年からのIPOデータをしっかり管理することで見やすく分析できるページがたくさんありますので、そちらも年末年始に皆さんが振り返る上でお使い頂ければと思います。年別データのページなどは年単位でのIPO情勢が伺えて良いのではと思います。

まず上場銘柄数ですが、2023年も100件近くのIPOがありました。2013年頃からIPOが再び活性化し始めていて年々数を増やし続け2021年はコロナ禍を考えれば最高潮の状態でした。その後も、100件近くの件数自体は維持していてIPO最悪期を考えれば、IPOの地合いが悪いと言いつつまだまだ捨てたものじゃない状況です。

ただし、2023年のIPO初値の勝率はかなり落ちました。今年はSBI証券主幹事のIPOが5連続で公募割れするなど、特に年後半に公募割れが目立ったと感じる人も多いでしょう。全体で勝率は7割程度まで落ちています。10回中、3回は公募割れしている現状。IPOは抽選に申し込んで高い倍率の中、貰える商品なのに、この外れの多さは少し不満が高まっているかも知れません。

もちろん微妙銘柄は回避すれば問題ないのですが、そうすると参加できるIPO銘柄数は少なくなるので悪循環になりますね。

もう一つ、気になる点は2021年あたりから初値1撃100万円といったIPOが出てきていません。IPOといえば一撃でかなりの利益を得られることが魅力の一つですが、そこが問題点とも見られて「2023年はIPOに関して2つの重要なルール変更」がありました。この2つの重要なルール変更は2024年以降IPOにも大きく影響しそうですので、2023年IPOの振り返りとしてはこの2つを取り上げたいと思います。

【IPO初値結果一覧表】騰落率、損益、その後の値動きなどチェックに

2023年のIPOリストは上記ページが見やすいです。

2023年に起きたIPOの重要な変更1「成行規制」 2023年6月

2023年6月26日からIPOの初値が付くまでの日で「成行注文」ができなくなりました。

規制前売り 規制前買い 規制後売り 規制後買い
上場初日 規制なし 規制なし 成行注文不可 成行注文不可
初値付かず(2日目以降) 規制なし 成行注文不可
即金規制
成行注文不可 成行注文不可
即金規制
初値が付いた翌日以降 規制なし 規制なし 規制なし 規制なし

赤字の太字になっている部分が、2023年6月26日の上場から変更されています。今までは上場初日にIPOの成行注文ができていました(証券会社によってはミスを避けるため指値しかできないところもあった)が、それができなくなり「指値」で注文することになりました。

この変更によって「需給が不安定な状況における株価のボラティリティの過度な増幅を抑えることを目的」とされていて、いわゆる初値やそれ以降の動きが過度になるのを抑えたい意図があります。今までは株価がいくらでも取り敢えず買う、取り敢えず売るという注文ができましたが、特に買い注文で成行ができないのは影響が大きいです。今までも初日初値つかずの2日目以降の即金規制では成行注文ができないことで、過度な動きを抑える規制になっていたので、初値形成や上場初日の値動きに大きな影響があった変更と言えるでしょう。

【IPO初値結果一覧表】騰落率、損益、その後の値動きなどチェックに

2023年のIPO結果リストを眺めてもらえれば分かると思いますが、今年の公募割れの多くは年後半になっています。特に微妙銘柄はそんなに高い指値でセカンダリーが買うことがなくなりました。また、どうせ成買できないならということで寄り前の買い注文がかなり減って、IPOセカンダリー情勢は初日だけでなく、その後2~3日を含めて動意づくか展開を見ることが必要になってきたと感じています。

この規制は初値がつく初日の株価の過度なボラティリティを防ぐ目的ですので、規制の効果は出ていると思いますが、初日で公募割れを起こす銘柄が複数出たのは弊害とも言えるでしょう。

2023年に起きたIPOの重要な変更2「公開価格の設定プロセス見直し」 2023年10月

10月1日以降のIPOでの変更です。この変更はスタートしたばかりですが、正直、やってみて問題点をかなり露呈していると思います。

変更内容は

  1. 仮条件の範囲外で公開価格が設定されることがある(上下20%超えルール)
  2. 上場承認から上場日までの期間短縮が可能
  3. 公開価格決定まで上場日の1週間程度の幅を持った移動可能性が出来る

私達に関係している大きな変更は太字の2つで、上場日に幅を持たせることが出来る方は、今のところ発表日の最短スケジュールで全てのIPOが進んでいますので、イレギュラーなことは起きていません。こちらはよっぽどの地合いの変化であったり、上場日の重なりで移動させたほうが良い場合の対応ですので、あまり起きる事象ではないでしょう。中止するより、上場日を移動して上場できるならせっかく手続きもしてきたので、上場したほうが良いという配慮でしょう。

かなりやばいと言える問題点が起きているのは1の方で「仮条件の範囲外で公開価格が設定される」という点ですね。すでにルール変更後、4つの銘柄で新ルールが適用されていずれも仮条件上限の20%UP(最大限高値)で公開価格が決定しました。なお、下限よりも20%DOWNも可能なのですが、これだけ公募割れが出ていてもその設定はされていません。

ブルーイノベーション(5597)のIPO新規上場情報

雨風太陽(5616)のIPO新規上場情報

ロココ(5868)のIPO新規上場情報 (公募割れ)

ヒューマンテクノロジーズ(5621)のIPO新規上場情報 (公募割れ)

適用の4銘柄のうち、2銘柄が公募割れを起こしていて、いずれも仮条件の上限値よりは高いものの公開価格より低い位置で初値がスタートしており、公募組としてはかなり悔しい思いをしているでしょう。

こちらのルールは変更が起きてからすでに4件が適用され、そしてその半分が公募割れという事態になったことで、早速多方面でそのルールの悪さ部分が指摘されています。私も特に感じるのは「仮条件という条件設定が既に存在するのに、後出してそれを逸脱できるというのはそもそもルール(条件設定)自体意味がなくなる」という部分です。一律20%幅が広げられるというのなら、最初から仮条件を広げておけば良いわけですし、やはり後からアップされるというのは納得の行きにくいルールでしょう。これは、早晩改善の余地があると思います。

私のサイトにもたくさんの方からコメントが寄せられていて、皆さんが多くの声を東証なり日本証券業協会などに伝えることにより、このルールのおかしさを再変更できるかも知れません。


東証へのお問合せ先はこちらのページに載っています。

https://www.jpx.co.jp/contact/

電話で匿名でも受け付けているようです。

日本証券業協会にも問い合わせページがあります。

https://www.jsda.or.jp/anketo/

特にパブリックコメントなども多く募集しており、ここがルールを考えて自主規制していますので、早いうちに新ルールのおかしさを訴えれば、謎なルールに対しては再び何かしらのアクションに繋がりそうです。

私もおかしいと思う部分は、しっかりと訴えておきたいと思います。ただ、すぐに良い方向に改善されるとは限らない(むしろその可能性は低い)ので、IPOに申し込む私達の方も新ルールに対応して動く必要があります。


ルールのおかしさを訴える以外に、私が今すぐできることとして感じたのは

  • 微妙銘柄のIPO申込みは成行で申し込まず、価格を入れて申し込む

これまで公募割れした2銘柄は当選者の方も仮条件の上限値で申し込んでおけば外れているはずです。特に微妙銘柄はちゃんと意図した価格で申し込むことで下手なIPOを掴むことは回避できるのではないでしょうか?ブックビルに掛かる必要資金も抑えることができます。さらにそういった行動を取ることで主幹事も下手な公開価格を決めることがなくなってくるでしょう。

  • セカンダリーは初値や初日の動きだけでなく、2~3日後の動きも含めた考えが必要

初値売りに関しても成行規制が起きてから不調になっています。さらに上場初日ではなくて成行注文が出来るようになる2日目以降に一気に盛り上がるといった少し遅れて動意づく銘柄が目立つようになってきました。初日は沈んで、翌日ストップ高なんて銘柄も増えています。こちらは6月のルール変更後、徐々に見受けられる動きですので、初値売りの対応も少し変化を付けていきたいですね。私はもともと成行注文を出さずに必ず指値で出していました(例のジェイコム事件と知っている人は成行はしない人が多いでしょう)。

初値売りをしたい人も、ちゃんと指値の価格設定を考えられるようにしたいですね。私は立会外分売ですぐ売る場合も指値で出す癖がついています。

いずれの対策も「成行→指値」へしっかり移行しようという方法です。指値にするということは数字を示さないといけないので、価格感も身についてきます。2024年以降は指値注文(売買したい価格を自分で考える)をしっかりするということをオススメします。


最後にIPOといえば年末年始は12月のIPOラッシュから、翌年のIPOまでの空白期間として「見直し買い」が注目されます。2023年はIPOのセカンダリー戦略をnoteで書いてきました。

セカンダリー記事に関しては「有料」になり需要がどうなのか?というのはあると思いますが、マガジン的な内容でセカンダリーで少しでも収益を上げたいという方の手助けになっていればと思っています。なお、当然個別検証は戦略が当たったり外れたりあるとは思うものの全体を通して悪くない内容になっていて、私自身もセカンダリーで2023年は勝てていることから、記事を読みつつ実力を上げていくと何かしらのIPOでの強みにはなってくれていそうです。

noteでは「2023-2024年年末年始見直し買い狙い目銘柄」という題目で一つ記事を書いてみたいと思います。雑誌の記事みたいなスタイルで当たるか当たらないかはフンフンと読んで結果を見て楽しんで貰えればと思います。

日経マネー 2023年 12 月号[雑誌] 年末相場はこれで万全!

今年はIPOのセカンダリー記事で日経マネーにも少し寄稿したことがあります。こちらでも何銘柄か提示したのですが、正直分からないなりに根拠を付けて紹介するというのは当たっても外れても参考になると思います。雑誌が届いて確認すると他の方の銘柄とも被ったりしていて、視点が同じだったりしているのが面白かったです(銀行株やカバーなどの注目銘柄も追いかけやすいとインタビューでは言ってましたが他の方に銘柄が取られてました(笑))。

2023-2024年末年始IPO見直し買い、狙い目銘柄

2024年もIPOでも色々あるかと思いますが、変化に上手く対応しながら楽しみながら、そして少しでも多く儲かればと思います。