40歳からの妊活。「不育症」はどこまで調べるべきか?

*妊活関係の露骨な表現が含まれますので苦手な方はここで閉じて下さい。

 

我が家は40歳を超えるくらいになってPuchi(パートナー)の意向で妊活が始まった。タイミング法に始まり体外受精(IVF)まで進み、これまで2度の妊娠で2度の流産(8週と10週)という結果で、「反復流産」と「不育症」に分類される状態に至っている(定義は以下)。

 

日本における「反復・習慣流産」および「不育症」の定義

・「反復・習慣流産」:2回連続で反復流産、3回連続で習慣流産。化学流産を含まない

・「不育症」:2回以上の流産。化学流産を含まない

 

今回の流産後の妊活お休みタイム(2-6ヶ月程度?)を活用し、今後の妊活方針を検討したいのだが、何をどこまでしたらいいのか皆目見当がつかない。そもそも「不育症」が何なのかもよくわからない(笑)

 

そこで、8,800円と値が張るものの全体像を理解するには丁度良さそうな比較的最近の本、「不育症 著:竹下俊行ら(2020)」を読んでみた。

専門家向けに書かれた日本語の総説的な本であり、素人のTochiにはほとんど内容が頭に入ってこなかったものの、病院で何か言われた時に辞書的な使い方をするのに良さそうだし、引用文献の記載もあるので、不育症に挑むなら1冊持っていても損はない様に思えた。

 

例によって個人的に気になったところをまとめた。

 

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 不育症の検査手順 

スクリーニング検査項目として推奨されるのは、抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断のための抗リン皮質抗体(aPL)の血清学的検査子宮形態異常の有無の確認のための画像診断転座保因の確認のための染色体異常の検査である。また問診から得た臨床情報に基づいて必要に応じて検索項目の追加を行う。各種ガイドラインが推奨する検査を以下に示す(表2)。

 

 

 

 

 原因不明の解釈 

不育症の原因検索を行っても、全ての検査で異常がなく、特別な原因が確認されない場合が多い。国内の不育症診療の専門施設内の調査によると、約65%のカップルでは原因不明であった。しかし、そうした原因不明の場合の大多数は過去の流産は胚の染色体異常の繰り返しが原因と推定され、そうした患者は一般集団と異なる特別な原因が存在するわけではないということになる。そして、原因不明の不育症カップルでは次回妊娠は無治療での経過観察が原則である。特に母体が高年齢でなければ、その後の妊娠では無治療であっても70%以上の妊娠成功が得られる。

 

原因不明と言った場合、胎児染色体異数性と正常流産を含む。原因不明不育症に対する確立された治療法はない。原因不明でも既住流産2回であれば80%、3回であれば70%、4回で60%、5回で50%、累積的に85%の患者が出産できる。英国のグループは、女性の年齢、既住流産回数ごとの次回妊娠の出産率を示した。例えば35歳で3回流産した女性の次の妊娠では73%の出産が期待できる(図4)。

 

 

 

 不育症の原因と胎児染色体異数性の割合 

散発流産の70~80%に胎児染色体異数性(aneuploidy)を認めるが、反復流産ではそのような偶然はないと考えられてきた。著者らは2000年に、カップル染色体異数性は散発流産で72.3%、反復流産で51.3%であり、反復流産では優位に染色体正常流産が多いことを報告した。胎児染色体異数性が見られた場合、胎児が正常の場合よりも次回妊娠における出産率は2.6倍高いことも分かった(図1)。

 

 

 

全ての症例で流産絨毛染色体を調べた482組の解析では、41%が染色体異数性に起因しており、染色体正常の真の原因不明は25%にとどまることが明らかになった(図2)。

 

 

 

 男性因子 

精子のDNAに損傷があっても受精は成立することが多く、妊娠率はそれほど低下しないが、その後の胚発生には少なからぬ影響があるという。16のコホート研究をまとめた結果によると、DNA損傷の高いグループは低いグループに比べ流産が明らかに高かったという(リスク比2.16)。特にDNS損傷をTUNEL法で評価した場合にその傾向が顕著であった(リスク比3.94)。最近の顕微授精(ICSI)症例を対象とした研究でも、高いDNA断片化率(30%以上)を示した群では低い群に比べて2.5倍の流産率であったと報告している。

 

 Tochiの勝手な感想 

不育症には実に様々な要因が想定されているものの、それが本当に不育症の原因なのか、単なる相関に過ぎないのかが明らかでないものが多く、治療法も効果があるとの報告があっても他の報告やランダム化比較試験(RCT:randomized controlled trial)では否定されたりと非常に混沌とした、無理やり良く言えばかなりホットな研究分野のようだ。

また、例えばプロテインS低下症の様に、日本人に顕著な疾患(欧米の10倍)との関連が指摘されるケースもある様で、複雑さがハンパない。

 

結果、なにが何だかさっぱり分からないことがよく分かった!

 

現状、我が家ではG-band法による流産絨毛染色体検査(染色体異数性と構造異常の大雑把な検査)の結果待ちなので、その結果とガイドラインの推奨する検査とをにらめっこして、それなりにやる価値がありそうな奴だけ厳選してやってみようか・・(せっかくだし!?)

 

もしG-band検査で異数性が検出されれば次回の妊娠は何と2.6倍の出産率らしい!(何でなん?)

でももし欠損とか転座の構造異常だと親の染色体も調べないといけなくなるのかな。その場合は基本的にヘテロ(1組ある染色体の片方のみ)なのかな。もしホモ(その両方)だったら妊活断念?

そしてもし何も検出されなかったら不育症の沼へ・・(汗)

 

今のところそんな傾向は全く見られないけど、流産後には高確率で鬱になるというデータがあるみたいだし、もう少しPuchi(妻)の様子を気にしたほうがいいのかも。

 

(つづく・・)

 

 

=23.10.11追記=

担当医の先生に聞いたのだが、「G-band検査で異数性が検出されれば次回の妊娠は2.6倍の出産率」というのは、異数性となるのは多くの場合は単なる確率の問題なので、二度連続して異数性を引く確率は、一度だけ異数性を引く確率よりも低くなるというだけのことではないか、とのことだった。

また親の染色体の構造異常は基本的にヘテロであるらしい。であるならは、PGT-SRを行えば(均衡型相互転座以外は)スクリーニングが可能だと考えられる(下図の②が均衡型相互転座)。

 

 

https://ivf-kyono.com/pgt-sr/

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