40歳からの妊活。「PGT-A」は有効なのか?

妊活中の我が家はこれまでに2度の流産を経験し、PGT-Aの適応基準を満たしている。

だったら次回からPGT-Aをやるべきなのだろうか?

 

不育症の全体像を理解するのに丁度良さそうだったので最近読んだ教科書的な本、「不育症 著:竹下俊行ら(2020)」及び日本における最新の臨床研究では、PGT-Aの有効性を一体どの様に捉えているのだろうか?

個人的に気になったところをまとめてみた。

 

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 着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の現状 

PGT-A技術の進歩により、海外において一部の平均年齢が若く、多数の胚細胞が採取できる予後良好群で不妊症患者の出生率改善が示された。一方、出産率・流産率ともに改善しなかったという報告もある(表2, 2013-2019年)。

 

 

 

日本においては、既住のある反復流産、反復着床不全患者を対象とした2つの特別臨床研究が35~42歳の不妊症の適用で対外受精を実施している反復流産患者を対象として実施された。その結果、患者あたりの出生率改善、臨床的流産予防の効果は認められなかったが、胚細胞あたりの出産率改善と生化学妊娠を含めた流産率の減少を認めた(表3, 2019年)。

 

 

文献10:Takeshi Sato et al. Hum Reprod.2019

 

このパイロット試験の結果をもとに改めて計画された多施設共同研究が2020年7月現在進行中である。この研究により、PGT-Aの不育症における効果の詳細や、年齢や卵巣予備能、胎児染色体異常流産の既来などによる効果が期待できる対象の限定化に関する新たな知見が得られることが期待される(以下の2つが恐らくこの研究の結果)。

 

 

① 日本におけるPGT-A/SR多施設共同研究の中間報告(2021年9月)

要約https://www.hanabusaclinic.com/files/about/pgt/pgt_pgta_01.pdf

 

 

② 日本におけるPGT-A/SR多施設共同研究の概要報告(2023年5月)

Preimplantation genetic testing for aneuploidy and chromosomal structural rearrangement: A summary of a nationwide study by the Japan Society of Obstetrics and Gynecology. Reprod Med Biol. 2023 May 31;22(1).

要約

◆ 次世代シーケンサー(NGS)またはマイクロアレイ(aCGH)法によるPGT-A/SRを行った。

◆ 合計6,080件の移植が実施され、移植あたりの臨床妊娠率、移植あたりの継続妊娠率、妊娠あたりの流産率はそれぞれ 68.8%、56.3%、10.4%だった。

◆ 臨床的妊娠率と流産率は、母体のすべての年齢にわたって比較的一定だった。

◆ 不妊集団、特に母体年齢が高い患者に対するPGT-A/SR検査は、移植あたりの臨床的妊娠率を改善し、妊娠あたりの流産率を減らす可能性がある。

◆ 排卵周期の60%以上では正倍数性胚盤胞を得ることができず、採卵周期ごとの累積出生率を改善できるかどうかは不明。

 

 

臨床試験に参加した患者の特性

 

 

胚盤胞内の正倍数性(A)、モザイク性 (B)、異数性 (C)、および診断不能な胚盤胞 (D) の分布

 

 

各染色体におけるトリソミーとモノソミーの分布(合計46,404個の異常)

 

 

臨床試験結果の概要

 

 

母体年齢ごと、A, Bカテゴリーごとの臨床的妊娠率とその後の流産率

 

 Tochiの勝手な感想 

PGT-Aの有効性に関しては賛否両論有り、一体どのデータを信じたらいいのかわからないものの、検体数と手法的には2023年の臨床研究が一番参考になりそうなものだ(なのに何故か肝心のコントロールが無いという…)。

 

この研究によると、PGT-Aによって年齢の壁の一端である異数性の増加を超えられそうなのは相当に画期的だし(壁のもう一端は採卵数の減少)、NGSって最新の手法で何か面白そうだなぁ、でも自費診療だし余りにも高いなぁ・・などと。

 

(つづく・・)

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